カラオケも一巡して、落ち着きを取り戻した時だった。
「そういえばさ、リカって彼氏いるの?」
突然の、瀬長の質問に僕は緊張を感じる。
僕が聞きたくても聞けなった質問だ。
リカは少し間を置いて答える。
「今はいないよ」
安堵の表情を浮かべる僕を横目に、瀬長は質問を続ける。
「好きな人はいるの?」
「うーん、気になる人はいるかな。」
リカはそう言うと僕をチラッと見た。
ような気がした。
僕は不意に飲みかけていたビールが器官に入り思いっきり蒸せた。
ユッコ(ズゴック)が笑い出す。
「大丈夫大丈夫!キミじゃないから!」
ユッコはそう言うと、僕の肩をバシバシ叩き、下品に笑った。本当に下品に。
ユッコの視線を感じる。
嫌な予感がした。
「キミ、リカのこと好きなんでしょ?」
僕は一気に酔いがさめる。
「何言ってんだよ。そんなわけないだろ」
僕は慌てて否定する。
しかしユッコは黙ることなく続ける。
「えー、だってさっきからリカのことばっかり見てるじゃん。分かりやすいよ」
「だからそんなことないって」
「好きって言えばいいじゃん。ほらほら!彼氏いないんだよ、リカは」
「もういいって」
「だってさっきからリカと話してるとき超嬉しそうなんだもん。好きなら好きって言えばいい・・」
「もう、黙ってろよ!」
場が凍りつくのを感じながらも、恥ずかしさと屈辱に耐えられず大声を張り上げる。
「まあまあまあ、ユッコちゃん。こいつもそう言ってるわけだしさ」
瀬長が間に入って場を取り繕う。
顔から湯気が出そうなほど、火照っているのが分かる。背中にじっとりと汗をかき、頭の中が混乱する。
(なんで、こんな女に俺は自分の気持ちをほじくられなきゃいけないんだ?ずっとずっと温めてきたこの想いを、なんでこんな感じでむりやり明かされなきゃいけないんだ?)
僕は、リカを見れない。
数十センチだけしか離れていないところにいるリカの顔を見ることができない。
リカはどんな顔をしているだろう。
驚いているだろうか。
呆れているだろうか。
困っているだろうか。
分からないけど、どう考えても喜んでいる顔が浮かばない。情けないほど、困惑している顔しか浮かばない。
僕はスッと立ち上がり、備え付けの受話器を取った。
「あ、すいません飲み物の注文いいですか。ウイスキーロックでお願いします。」
僕はとことん飲もうと決めた。