運ばれてきたウイスキーを、僕は一息で飲みこんだ。
ユッコが大きな声で僕を煽る。
「いいねえ!いい飲みっぷり!」
「うるせえ!ズゴックは黙ってろ!」
「ズゴック?へ?」
瀬長が僕を制す。
「おい、おまえちょっと飲みすぎだって・・」
僕は下手くそな笑顔を浮かべる。
「大丈夫だよ。・・ほんと大丈夫だから」
すると突然視界がぼやけた。
頭がクラクラする。
少し横になろうと思った矢先、強烈な吐き気が襲ってきた。
僕は慌てて部屋を飛び出す。
間一髪、トイレでマーライオンのごとく吐き出す。
(はあはあ、何やってんだろ・・俺・・・ 情けない)
僕はトイレに突っ伏している。
すると、後ろに気配を感じた。
振り向くとユッコが立っていた。
ユッコは僕を見るなり、口を開いた。
「あんた、このままでいいの?」
「はあ? 関係ないだろ・・」
「あたしと組まない?」
「なに?」
「部屋に戻ったらあんたがリカを外に連れ出すのよ」
「どういうこと?」
「大丈夫。あたしが酔ったフリして、リカに煙草買ってきて~って言うから」
「それで?」
「リカ一人じゃ危ないからあんたもついて行けって言うから。そしたらあんたも一緒に出るの。いい?」
「そんなうまくいくのかよ。」
「やってみなきゃわかんないでしょ。あの子ドンカンだからあんたからガンガンいかないと絶対無理だよ。それに・・」
「それに?」
「あたしもセナガくんガチでいきたいの!ほらいくよ!」
僕はユッコに支えられ、トイレを出る。
フラフラとおぼつかない足元をやっとの思いで堪えながら、ユッコの頑丈な胸板に支えられる。僕はふいに子供の頃に抱っこしてくれた父親の姿を思い出し、安心感を覚える。
(もしかすると・・うまくいくかもしれない。リカも相当酔っていたし。こいつの言うとおりやってみたら、うまくいくのかもしれない。よし、行こう。こんなところで腐っている場合じゃない)
僕は部屋に向かって歩き出す。
301号室の前で深呼吸をする。
扉を開けようとしたした瞬間、何かが視界に入ってくる。
僕は固まる。
部屋を覗き込むと、瀬長とリカがキスをしていた。