誰もいなくなった廊下で、僕は1人たたずんだ。
借金?
悪人?
秦野さんが?
嘘だろ。
そんなことあるはずがない。
けれど僕は、秦野さんのことを何も知らない。
(おいおい。あの男達は秦野さんを見つけたらどうするんだ?まさか、殺すのか?もう何が本当で嘘なのか分からない)
高鳴る鼓動を必死で抑える。
あの写真は間違いなく秦野さんだった。
それは間違いない。
僕にいったい何ができる?
何かすべきなのか?
いや、何もできないだろう。何も知らないんだから。
でも・・・。
何度、自問自答しても堂々巡りの答えしか返ってこない。
僕はいてもたってもいられず、とにかく何か手掛かりはないかと考えた。
すると、いつか玄関のドアに挟まっていた劇団の公演チラシを思い出した。
以前、目を通した後にテーブルの上に置いたままにしていたチラシだ。
劇団の関係者なら何か知っているかもしれない。
電話で事情を聞こうかと思ったけれど、何から話せば良いか思いつかず、僕はひとまず劇団の事務所のある幡ヶ谷まで出向くことにした。